この五十年の真珠衰退を思う 第20回 いろいろと言っては見たものの-最終回(2014年 時計美術宝飾新聞)

 まあ、こう色々と言ってみましたが、実行される可能性はほとんどないでしょう。なんせ、すべてが平等第一の日本のなかで、場合によっては会員除名を前提とするほどに大胆な会ができるのか、さらにはそれだけのリスクのあることをやろうという若者がいるのか、ちょっと考えただけでも、まあ無理無理という声が聞こえます。
 この原稿を書いているとき、日経の夕刊にダイヤモンドを使った詐欺が三面に大きく出ました。久々の宝石関連記事が詐欺事件とは、いかにも今の業界を象徴していますよ。これなど、詐欺をやったのが業界人なのかどうかは不明ですが、少なくとも業界からダイヤが流れていることは間違いない。こうした詐欺行為が間歇泉のように、繰り返し出て来る業界というのは、それなりの理由があるのです。
 最大の理由は、業界団体というか業界の権威を持つ団体が、業者の善し悪しをまったく判断しないことです。業者はみんないい人、売っているジュエリーはみんな良いものという前提で、お客にとって何が良いのかをまったく考えない業界の体質にあります。顧客にとって良くない物は良くない、程度の悪い業者はダメ、それを示すのが業界団体のあり方ではないでしょうか。真珠振興会やジュエリー協会にこうした意思はあるのでしょうか。そんなことを言えばあそこは倒産しかねないしとか、あいつとは取引もあるしとか、あいつとは付き合いも長いしとか、そうした内向きの理由だけで、何も言わない、それが業界ではないですか?? それで不利益を被るのはお客ですよ、内輪の論議には、その視点がまったくありません、業者の仲良し会ですよ。
 もうそろそろこうした皆いい人という行き方は止めるべき時期に来ていると思います。業者と商品の善し悪しを業界として明示すべき時期に来ている、その一つが良い真珠だけをきちんと売る業者だけの団体を作り、それをお客様に知らせてゆく、それだけしかアコヤ業界の回復、ひいてはアコヤ真珠のイメージアップの方法はないと思います。それが大変なことは分かりますよ。なんと言っても、我々は売れてなんぼの世界に生きているのですから、売れるということは大事です。しかし、売れれば何でも良いと言う訳ではない。まあ、20回に渡り、自分の思い出も含めていろいろと言ってきましたが、まあ、言っても無駄だろうなという空しい想いは消えません。誰か若手で俺がやるという人いませんか? お手伝いならいくらでもやりますが。
 長々と、ご愛読有り難う御座いました。

2019年3月31日