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今年の巻頭に


 先週に公開した五つのコラムを書き終えて、昨年に書いた巻頭のコラムを読み返したら、言っている事がほとんど同じで、マア、この一年、なにが変わったのか、自分の不勉強は棚に上げて、おも思わず憮然となりました。業界として、なにかやったかと考えると、韓国人の美人タレントさんを、なにかアンバサダーとかにしたことくらいしか思いつかないのですが。

 これまでも不思議に思っていたのですが、少しなりとも業界が外に向かって何かを発信しようとすることのほとんどが、男の発想というか、男相手の内容のものが多い。しかしジュエリーを買うのは、ほとんどが女性ですよ、そこには何やら韓国女性をアンバサダーにしても、女性が喜ぶと思いますか??

 毎年の行われる業界のフエアでも、10代から60代の美女を集めてジュエリーを差し上げるというイベントがありますよね。聞くところによれば、誰が一番見ごろの女性を担当するかで、もめることもあるとか、まあまあ、スバラシイ企画ですね。しかし、最初のころはマスコミにも取り上げられましたが、最近では、せいぜいがサラリーマンのオヤジが会社帰りに買って、家には持ち込めないエロ夕刊紙にちょこっと乗る程度、アレを読んでいる女性は、まずいませんよ。費用は相当にかかるでしょうに。

 これはあくまでも私見ですが、業界団体がやるべきことは、もうすこし長い目でみた業界のレベルアップにあるのではと思います。そのひとつは、ジュエリー学部を作ることです。近年やたらと、新設の大学が増え、前からある大学でも学部が増えています。多くは、何をするのか分からない国際なんとか部ばかり、そんなものよりジュエリーを専攻する学部をお願いする、そして金銭と人員、道具、実物などの援助を行う。就職も優先する、こういった作業で、ジュエリーというものがひとつの美術だということを明らかにする、同時にすぐれた人材を自ら産み出す。いや業界には専門学校があるよといわれると思いますが、もちろん、専門学校が駄目だというのではない。専門学校は、どの分野でも同じですが、直ぐに役に立つ事だけしか教えない。ですから、デザイン画をサッと描いたり、ちょこっと物を作る事は、すぐに覚えるのは間違いないし、それなりに便利でしょう。ですが、それを繰り返していても、いまの状況とは大きくて変わりません。もう少し、違うレベルの教育が必要なのですよ。お分かりでしょうか??

 二つ目は、業界としての勉強の設備、つまり、図書室とか、サンプルルームとか、研修設備とかを都内に作ることです。それぞれの企業が、ばらばらに持っているものは、けっこうたくさんあるあると思いもいますよ。それを一堂に集めて、だれもが利用できるようにする、同時にまた、毎年の予算を付けて、これはと言う本とか、実物などを集めて参考にする、そうした設備が全くない。

 こうしたことは、即座の利益には結びつかない、だからこそ、トップに立つ人びとが率先してやらなくては、できない。まあ、無理でしょうね、これを書いていて、そう思いますよ。恐らく五年のうちに、小売店はいまの半分になり、上澄みは欧州勢に喰い荒らされ、一番下は東南アジア勢に喰い荒らされる、シロートの新規参入勢は出たり入ったり、ネット、テレビ販売は今よりも増え、ジュエリーともアクセサリーとも区別のつかないものを売り続ける。それが見えてくる業界の近未来ではないでしょうか。このコラムも、今年で引退したいと思います。こんどは、本気です。

  令和六年一月 山口 遼 拝