この五十年の真珠衰退を思う 第19回 業界団体の不思議(2014年 時計美術宝飾新聞)

 真珠業界だけではなく、宝石業界には実に多くの団体があります。業種別、地域別、仲良し会に近いものなど、実に多い。まあ、それはそれで結構なことですが、不思議なのは、どの団体も参加に条件をつけていない、つまりですね会費を払って入りたいと言えば、誰でも会員になれる。当たり前じゃないかと言われるかも知れませんが、会が同好の士の集まりならそれでも良いでしょうが、外に向かって何らかの意味を持つ業界人の集まりという意思表示をする会ならば、それは問題です。日本ジュエリー協会も真珠振興会も、そうした会なはずですが、入会を拒否された会社があるとは聞いたことがない。誰でも会員になれますが、会員数は減るばかり、不思議ですよね。
 まあそれはそれで別に論じてもいいのですが、今回はアコヤの名誉回復、ブランドイメージ回復の手段を論じている訳で、そのためには会員になる条件を備えた会が必要なのですよ。前回の15回目にもちょっと触れたのですが、アコヤを愛する人を中心として、他の真珠でも宝石と言える真珠だけを大切にしようという人だけが集まり、内規を決め、それを守る気のある人だけを会員とする真珠の会を作り、その決まりに準ずる真珠だけをお客に内容を明示して売る、それを守れる人だけを会員とする、会員の認定は発起人が行い、会員が増えるに従って認定委員会の認定を基本とする、だから会員になっても違反があれば除名もありうるという会です。
 この基準を守る会社とだけ付き合う、だから小売店の参加は大事です。養殖業者、卸会社だけでなく、心ある小売店も会員になってもらうことが大切になります。基準ですか、まあ皆で決めることですが、養殖期間は最低でも一年以上、漂白は認めるが過度の染色はしない、真珠そのものに妙な名前はつけない、会の認定証のようなものを付けて、広告よりも広報を利用してお客の理解を求めてゆく。くどいようですが、この意味でも最終販売者である小売店の参画は絶対ですよ。素材としての真珠の扱いはこう決めたとして、真珠ジュエリーの開発を共同で行う、真珠の婚約指輪やグラジュエーションのネックレスなど手掛かりとしては良いと思いますよ。
 御木本幸吉が養殖真珠を売り出した時、彼が自分の真珠につけた価格は決して安いわけではなかったのです。当時の天然真珠の価格の60−70%と言う、非常に高い値段だったのです。その後、ひたすら安い安いだけを売り言葉として今日の雑貨に至ったのではないですか。安い物をお客は便利に利用するけれども、内心は馬鹿にしていることをお忘れなく。

2019年3月31日