四月の東京で見るべきジュエリー関連の展示会

この三月二十日から五月二十日にかけて、六本木の新美術館でトルコの至宝展なる展示会が開催されている。イスタンブールのトプカプ宮殿から、オスマントルコ帝国の文物を集めたものだ。人類史上、最大の帝国の一つであるオスマントルコは、ほぼ600年の歴史を持ち、そこに集められた宝物は莫大なものであったが、帝国最後の頃のサルタンであったアブダルハミト二世が、迫り来る革命を恐れて多くの財宝を二度にわたって持ち出し、最初の時には持ち出しを依頼した人物に持ち逃げされ、さらに懲りずに二度目のものを持ち出してパリで売却したために、肝心の部分は散逸してしまった。それでもなお、今日のトプカプ宮殿博物館には、有名なダイヤモンドであるカシクチダイヤモンドを始めとして多くの財宝が残っている。今回、東京で展示されたものは、その一部で、極めて貧弱なセレクションであるが、一見の価値はある。

宝石好きにとって、見るべきは最初の一部屋だけだ。ここにはサルタンの頭上を飾って居場所を示すのに使われた飾り物に使われている巨大なエメラルド三個を使ったものと、護身用の短剣で握り手の部分が、これまた一個の巨大なエメラルドのもの、さらにはダイヤモンドやルビーを象嵌した水入れ、二個のアーチャーズリングと呼ばれる親指に嵌める指輪など、ジュエリー好きには堪らない逸品が並ぶ。トルコという国は、なかなか普通では行かない国だけに、この機会にオスマントルコの栄華を垣間見るには良いと思う。
この後の展示は、見たければ見ればいいという程度のもので、展示も解説も論外のお粗末さである。いつも思うのだが、小役人が博物館を作るといつもこうなるので、台北の国立故宮博物もソウルの国立中央博物館も同じで、立派なのは建物だけ、展示物は大幅に減り、展示も解説も不十分というのが多い。この新美術館も例外ではなく、この展示会でも、展示物の解説もほとんどなく、それでいて中国語と朝鮮語の名前だけは全品についているという、アンバランスさである。展示方法も寒々としたもので、売店もないに等しい。見終わってああ、楽しいと思えるものではないが、オスマントルコという国の栄華の凄さを知るだけでも、まあ、行く価値はあるだろう。