IJT会場に舞う赤い羽根

 久々にIJTの会場に行ってきた。オリンピックのせいとやらで、会場がいつもより複雑になり、非常に見にくいというのが第一印象で、さらに、明らかに宝石業者ではない、ご婦人方が大量に会場に見受けられたのが特徴であった。まあ、世の中、安ければ買うという客層はいつもあるもので、自分に似合う似合わないはどうでもよく、安いですよに釣られてきた人たちである。どうして、こうした人々が入場できるのか、一説では東京の富裕層が住む地域に、大量にDMがおくられたとか、真偽のほどはわからないが、そうかなとも思える風景であった。
 展示商品の方も、特段のものはなく、海外勢ではロシアからの連中が目立った。やや高すぎるが、見事な半貴石を持った連中がいて、これからの発展が楽しみだと思う。そうした代わり映えしない中で、不思議なブースが一つあった。ルビーフェザープロジェクトと題する半分ほどのブースだが、ルビーで作った赤い羽根を提案しており、売り上げの一部を赤い羽根共同募金に提供するという、名古屋の浅井商店の企画である。小さなルビーを150個以上セットした赤い羽根で、おそらくバンコックあたりの製品と思われるが、見事な作りのペンダントだ。小売店とのコラボで売る企画らしいが、商品そのものも良く出来ており、小売店の店頭で商品そのものと共に、チャリティに参加させてもらうという売り方は、面白いと思う。小売店としても、在庫になるわけではなく、お客様になんとなくいい気分を味わってもらえる企画で、売らんかな丸見えの催事の中で、ちょっとした気晴らしになるかと思ったが、担当者に聞くと、反応はイマイチだとのこと。
 まあ、それもそうだろうなというのが実感だ。こうした遊び感覚のある販売を行うほど、今の小売店はゆとりも度胸もないだろう。土台、売ろう売ろうで目が血走っていて、売れるわけはないのがジュエリーだということが、わからない。ジュエリー商売の半分は、良い意味での遊びだということが、彼らにはわからない。まあ、無理な連中に思い切った企画をさせた浅井商店は、ある意味で偉いなと思いながら、会場の隅っこのところで、赤い羽根がひらひらと舞っている会場を後にした。

2020年2月4日