野中塾・講演会原稿

これはこの十月十六日、野中塾にて行った講演の原稿です。

野中塾は、元安心堂の専務でありました野中さんが主催する勉強会で、すでに二十回を超える会合を開いた会です、是非、ご参加を、特に小売店の皆様には、参加をお勧めします。文中、二世の欠点を3件並べたところは、空欄で講演後に書き込んでもらいましたが、この原稿では埋めておきました。

 

野中塾・講演会
2019年10月16日

 

たぶん、これが最後の講演でしょう、大顰蹙を覚悟で、
言いたい放題、気に入らなければ捨ててください。

 

1. 我々はどこで間違えたのかーー現在の業界不況に至る経緯について。

(1)1960年代から高度成長期とともに、宝石業界の拡大が始まり1985年前後まで一直線に増えていった。

(2)理由は簡単、誰もジュエリーを持っていなかったから買った。内容のいかんを問わず、売る方もなんでも売れたから、商品に深い関心をもたなかった。

(3)それでも売れたのがバブル期。売ったのではなく、売れた時代。

(4)1990年前後から、実際には85年前後から、売上停頓、理由はジュエリー需要の一巡と景気の不透明感、さらにジュエリーに慣れた顧客の既存デザインのジュエリーに対する反発。

(5)この頃、海外ブランドの現地法人化と積極展開の始まり、上層客の移動が始まる。同時に、海外に出る日本人が一千万人を超える時代に。海外もまた、競争相手の時代に。

(6)にもかかわらず、業界は売れないジュエリーの内容について反省せず、目垢のついたジュエリーをいかにして売るか、売り方の方法に専心した。その行き着く先が「マグロの解体ショー」であり「ローン販売」の強化であった。その結果としてのローン規制。

(7)このことは、我々は気づいていないが、世界に類を見ないこと、どこの国でもジュエリーの不況というか売れないというのは共通しており、日本以外の国では、その対応策として、商品の変革、新しいものへの挑戦、デザインの重視が行われている。日本のみが商品を無視して売り方のみを考え、世にも奇怪な販売方法、つまり無理やりのローン、ホテル催事、ユーザー展、旅行あるいは食事付きの販売、などを創案した。このこと自体はある意味で褒めるに値するが、商品が全く同じであった。

(8)小売商は問屋依存のまま、問屋は小売店が文句を言わないから、今までの作品に反省なし、それで売れたら奇跡というもの。

(9)問屋と小売店との間で、良い意味での商品についての議論がないまま、馴れ合いで進行しているのが今ではないか。

2.現状を打破するためには。

(1)これからの5年間で今6000軒ほどある小売店は実質的には3000軒ほどまでに減ると思う、要するに残る側にいればいいこと。残れば、売り上げは最低倍増する可能性はある。

(2)残る、残らないを決めるのはお客、お客が店を見限るか否かは、店でどんなジュエリーが見られるかによる。

(3)ジュエリーというものに関心も興味もない宝石商は消えるか、電池交換と赤札の値引き販売専門店に。ジュエリーが好きでない人は、必要ない。転業をお勧めします。お客様というものは、ジュエリーを勧める人が、そのジュエリーを本当に気に入って勧めているのか、単に扱い商品として勧めているかは、自然と分かるもの、これが分からない小売店が多すぎる。売り手が男性であっても、これは同じである。

では具体的な提案とは。奇策などはない。

(4)第一は、小売店が扱うジュエリーを、今あるジュエリーからワングレードかツウグレードほど上げること、一番上を見ろということではない。そのためには、何が市場にあるのかを勉強すること。問屋のいいなりで扱わないこと、問屋との不必要な仲良し、それは滅亡の元。店主がこれはと思う,これを売ってみたいという気持ちを持てるジュエリ-だけを扱うこと。そういう感覚がなく、何も考えつかなければ、消えるだけ。

小売業とは、日々の黙々とした活動の繰り返しである。突然売れる奇策などはない。
女性が小売店には多いが、自分が売っているジュエリーを自分がつけたくなるものか、考えたことがあるのか。自分が感動しないものを客に勧めても、それは客に伝わるものだということを認識すること。自分の感動は、客に伝わり、それが売り上げになる。

(5)第二に、作り手、あるいは問屋は今ある商品についての反省、あるいは見直しを行うこと。今までと同じものを、同じように並べて売り上げが変化するのを期待するのは、無理。今使っているデザイナーは本物なのか、自社は本当の開発をしているのか、他社のコピーではないのか。小売のチャレンジ精神と問屋あるいはメーカーの反省がない限り、宝石市場の復活はない。

ここで一言。

小売、問屋、ともに家業がほとんどで、二世、三世の時代、その共通した欠点は、

①ケチである
②他人の言を信用しない
③決断力がない

これは高崎達之助さんの名言。貴方はこれに該当しないか?????

さらに一言。

「馬鹿な大将、敵より怖く候。」
この名言の意味を悟り、自分がこう言われていないかを反省すること。

煎じ詰めれば、今やっていることを肯定しないこと。疑問を持つこと、何かを変えることを考えること。それが出来ない限り、変化はない。
転業を考えること。

その繰り返し以外、奇策などは絶対にない。

これからの私の意見、発信は
「山口遼のジュエリーブログ」https://ryo-yamaguchi.comをどうぞ。

2019年10月18日