少し変ではないですか????

 このところ、いろいろな英語の略語に悩まされています。曰く、GTBT、さらにはGTBTQ, またまたSDGsだとか、ダイヤモンドの世界ではトレーサビリティだとか、いやあ難しいことです。SDGのSはサステナブルだとか、なんやそれと聞いたら、持続可能なという意味だそうです。

 ジュエリーの世界で、このトレーサビリティとサステナブルが問題でしょうね。
 
 トレーサビリティというのは、まあ氏素性をはっきりさせろということらしい、どこで取れた石なのかを分かるようにするということらしいですね。サステナブルというのは、ダイヤモンドを入手するために地球を掘り返すな、つまり掘り返して地球が持続できないようなことをするな、地球を痛めない人工ダイヤモンドは素晴らしいのだと、人工ダイヤモンドの皆さんは鬼の首でも取ったように騒いでいます。

 私はこの二つの議論は極めていかがわしいと思っています。ダイヤモンドの氏素性でいえば、フリータウンからモンロビヤかコナクリに運ぶのは簡単、一旦運んでしまえば、ダイヤモンドに顔があるわけではない、それはシエラレオネ産のものではないということになる。そこからどんなトレーサビリティの書類があろうとも、追求はできない。もっともらしい書類だけが、大手を振って世界を流れている、と思います。もちろん、ダイヤモンドが全てシエラレオネ産のものではない、ちゃんとした書類がついたまともに産地を特定できる南アフリカとかナミビアとかのダイヤモンドが、大部分でしょう。それはそれで結構、ですがトレーサビリティが完全なわけではないと思っています。

 サステナブルの方ですが、ダイヤや色石を採取するには地球を掘りかえす必要がある。しかしサステナブルだという人工ダイヤモンドの指輪でダイヤモンドを支えている金やプラチナは、もっと地球を掘り繰り返しているのではないか、さらに石油や天然ガスはどうなのといえば、ダイヤモンドの比ではない。私は、ダイヤモンドが採れる世界地図をよく見るのですが、確かに神様というのはいると思います。ダイヤモンドの産地が、もしダイヤモンドが全く取れないとすれば、誰かわざわざ訪ねていくのでしょうかと思える場所でダイヤモンドは取れている。ロシアのツンドラ地帯の地下、カナダの山の中、オーストラリアの誰もいない平地、ナミビアの海岸、神様はそうした場所にダイヤモンドを撒き散らしたとしか思えないのです。神様は公平なのですよ。

 まあ、そうした論議は、いろいろと異論もあるでしょうし、私の意見が正しいと言い張る気持ちはありません。ただ、最近の宝石業界の議論を見聞きしていると、非常に気になることがあります。それはジュエリーの本質に関わる議論はほとんどなく、サステナブルなんだとか、このダイヤモンドは素性が分かっているとかの論議ばかりが横行していることです。さらに最近では、AIによるダイヤモンド鑑別ができるようになるとか、デザインの多くは3Dによるとか、まあ、このまま進めば、ダイヤモンドをAIの器械に放り込んで鑑別を取り、3Dで作った台座にセットしたものが、ジュエリーですよということになりそうです。そこには、それは美しいのか、優れたデザインなのか、見事な作りなのか、などという論議は全くない。しかも売る方も、テレビで訳の分からんことを大げさな身振りで、間も無く売りきれですと絶叫している売り方が大手を振るというのでは、これは一体何なんだと思うのは私がおかしいのでしょうか。

 とにかく、何かがおかしいと思う今日この頃です。